チュートリアル

オーガナイザー:包 含(京都大学)、大谷 まゆ(サイバーエージェント)

チュートリアル1 [11月4日(月・祝) 13:00 – 14:30]
荒瀬 由紀(東京科学大学)

言語と数理の交差点:テキストの埋め込みと構造のモデル化

深層学習の登場以降,機械学習と言語処理の距離はぐっと縮まった.機械学習が問題を抽象化して議論するのに対し,言語処理は言語また言語処理タスクに内在する構造や制約を前提としてモデル化を行う.例えば文の処理では文法的制約を与える木構造を前提とし,対訳辞書構築では単語をノード,対訳関係をエッジとする二部グラフを想定する.このような言語処理固有の背景は機械学習分野からは把握しづらい一方,興味深い問題を提起する.また機械学習による構造の数理的モデル化は言語処理に対し強力なツールを提供する.本チュートリアルでは機械学習による言語処理を支える単語や文の埋め込み手法,内在する構造を木編集距離や最適輸送によりモデル化することで言語処理にアプローチする研究を紹介し,自然言語処理と機械学習分野の相互理解が深まることを目指す.

チュートリアル2 [11月4日(月・祝) 15:00 – 16:30]
梶野 洸(フリーランス)

創薬における機械学習技術について

創薬は新規薬剤を作り出すプロセスである.創薬の分野では,インシリコ創薬という体系のもと,従来より統計・機械学習を含む計算機科学を応用した創薬支援が行われてきた.その一方で,近年機械学習分野でも創薬への応用を見据えた研究が増加している.本チュートリアルでは,まず創薬のプロセスの概要を説明し,次にそれぞれの技術体系の概要を紹介する.最後に,創薬に対して機械学習技術の果たせる貢献について議論する.創薬特有の機械学習の紹介としてだけではなく,機械学習の学際的な研究の一例としても楽しめるように講演設計する.ニューラルネットワークの学習などの基礎的な機械学習の知識は仮定するが,創薬の知識は前提としない.

チュートリアル3 [11月4日(月・祝) 17:00 – 18:30]
齋藤 優太(Cornell University)

反実仮想学習の基礎と実応用

反実仮想 ─ 起こり得たけれども実際には起こらなかった状況 ─ の正確な情報を得ることは,推薦・検索システムやマーケティング,治療選択など実社会に存在する意思決定の最適化に必要不可欠である.ログデータに基づいた反実仮想の推定や比較を通じてこれらの最適化を目指すのが,反実仮想学習と呼ばれる機械学習と因果推論の融合分野である.本講演では,本分野の研究開発にこれから参入しようとしている方々や,関連技術の実応用に興味がある方々を主な対象とし,本分野を教師あり学習や強化学習と比較しながら位置付けることから始める.また重要な基盤技術である反実仮想推定の典型的な定式化と基本手法を紹介する.最後に,企業での応用事例やLLM時代に残された研究課題について議論する.