二日目:プログラム詳細

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企画セッション2:データ駆動科学と機械学習 (9:30 – 11:30)
企画担当:中西義典(東大)、藤井慶輔(名大)

サンプリングによるデータ駆動科学

講演者1: 福島孝治(東大)

自然科学のこれまでの方法は「実験」「理論」そして「シミュレーション」であった.特に,1980年代における計算機の大幅な発展により,「シミュレーション」が実験困難な状況や理論的に複雑な問題へのアプローチを可能にし,三つの方法によるループが科学の発展の加速を可能とした.ここに第四の方法として,データ科学が登場することになる.この自然科学におけるデータ科学的方法では既存の自然法則を適切に取り込むことが現象の理解には肝要であるが,それは必然的に解析モデルに複雑さを導入することになる.そこで汎用性の高い解析手法としてのサンプリング技法が有効になる.近年のサンプリング技法の解説とともに自然科学におけるデータ科学について議論する.

データ駆動科学の立場からみた物質科学と情報科学の接点

講演者2: 安藤康伸(産総研)

物質科学分野ではマテリアルズ・インフォマティクスと呼ばれるデータ駆動アプローチによる研究が盛んに行われている。実際、新規材料探索の文脈で特筆するべき成果が報告されることなど広く注目を集めている。一方で物質科学の課題と情報科学の一般的な接点は未だ不明瞭であり、その応用範囲は限られている。これは物質科学の取り扱う領域が極めて広いこと、そして研究者の身近な課題解決に使われた事例が少ないことなどが要因としてあげられる。本講演では講演者が推進してきたマテリアルズ・インフォマティクスの実例として、分子動力学計算のための機械学習ポテンシャルに関する研究と、計測スペクトルデータの高速解析のための機械学習技術の応用を解説し、これらを通してみえた物質科学と情報科学の接点について議論する。

集団運動におけるデータ駆動科学

講演者3: 藤井慶輔(名大)

構成要素が相互作用し複雑な動きを見せる集団運動を理解することは、物理学や生物学、ヒト行動科学などにおいて重要な問題である。しかし、実世界の生物集団などでは、要素間は互いに物理的に接続されていないため、その複雑な運動の背後にある規則が不明な場合が多い。そのような場合には、計測されたデータから集団運動のメカニズムを推定・理解するという方法が有効である。本講演では、主にスポーツのような複雑な集団運動を対象に、データ駆動的な手法を従来の手法と比較して整理しながら、その有効性について議論する。その例として、個体間相互作用に関してデータ駆動的に力学系の特徴を抽出する作用素論的スペクトル解析手法、およびその分類や予測への応用例を紹介する。また、その他のデータ駆動的なモデリング手法に関しても紹介する。  

招待講演2:空間視聴触覚技術の社会実装( 15:45-16:45 )
講演者: 落合陽一(筑波大)

2017年末よりJST CRESTのプロジェクトとしてxDiversityというプロジェクトを行なっている.本プロジェクトでは、人の空間認識能力の補完(見ること・聞くこと・触ること)と空間干渉能力の補完(物を動かすこと・音と光で情報を伝達すること・体を動かすこと)の統合を研究者と実際の困難を抱える人々のコラボレーションによって実現し、人々の能力拡張・能力補完のための機械学習環境およびデバイスとの連携環境の設計を目指している。これまで困難とされていた様々な研究課題に性能向上がもたらされた結果,機械学習の問題として定量化・定式化が可能な課題に対しては,アルゴリズムに与える学習データの質と量だけが重要な要素になるということも共有されつつある.より汎用的かつ高精度な機械学習法が依然として重要な研究課題として存在する一方で,今後機械学習の応用領域においては(特定領域に特化して精度を高めていく意味で)問題設定を探求することが改めて重要になると言える.つまり,メソッドドリブンのアプローチだけではなく,タスクドリブン(Endto Endのアプローチ)の重要性が再び高まっている.一般物体認識や一般音声認識をメソッドドリブンで目指す方向性は,必ずしも現状の社会をすぐに前進させるわけではない.なぜなら複雑なコンテクストや個人によるセマンティクスの違いを認識するためには未だ多くの課題がある.本講演では本プロジェクトで行われた事例やタスクについてケーススタディをお話しする.