第4回情報論的学習理論ワークショップ
   (IBIS 2001)開催に際して

IBIS2001 実行委員長 鈴木 譲

このたびは、第4回情報論的学習理論ワークショップ(IBIS2001)に多くの方(6月29日現在167名)にご参加いただきありがとうございます。開催関係者を代表して、厚く御礼申し上げます。IBISは、1998年7月に山西健司氏と竹内純一氏(ともにNEC)の呼びかけのもと、広い分野にまたがる学習研究者の交流の場として自然発生的に旗揚げされたワークショップで、計算論的学習論、情報理論、統計学、統計物理学、ベイズ理論、情報幾何学といった多くの分野の研究者が一同に会して議論をする場です。昨年のIBIS2000の直後、現在の電子情報通信学会情報論的学習理論時限研究専門委員会(IBIS-TG、委員長: 山西健司)のメンバと話し合った結果、「今度はお前が当番だ」ということになり、鈴木はIBIS2001の開催の責任者を引き受けることになりました。しかし、会議の主役はやはり「研究の感動」であり、そのような成果を発表した人が貢献者であると思います。幸いにも、IBISではこれまでに感動を呼び起こすような方に多く講演していただき、また質の高い議論がなされてきたと思います。今回も、招待講演として、馬見塚拓(NEC)氏、長岡浩司(電通大)氏、加藤直樹(京大)氏、田崎晴明(学習院大)氏、山本博資(東大)氏といった最先端でご活躍の方々にお話していただくことになりました。また、特別セッションとして、「Combining Predictors」「データ・テキストマイニングにおける統計的モデリングの実際」といったIBISの守備範囲でも関心の高いテーマが議題として選ばれ、そのために多くの優れた方々が今回IBISに参加されていることも、大変喜ばしいことと思われます。さらに、一般講演でも質の高い結果をIBISで発表される方が少なからずいらっしゃいます。こうした方々に、深く敬意を表したいと思います。

今回からは、主催が情報理論とその応用学会からIBIS-TGに移り、独立した運営が可能になりました。そこで、自由で思い切った試みが色々なされました。まず、会期を2日から3日にし、十分な時間的余裕をもっていただけるようにしました。宿泊で2泊3日ではかなりの人とお金が必要ですので、東京で開催ということにさせていただきました。宿泊でない分、十分な議論ができないかもしれないということから、懇親会を割引にしました。また、テクニカルな面での責任をプログラム委員会に権限を委譲しました。鈴木もプログラム委員会では、その一員にすぎません。そして、新進気鋭の福水健次(統数研)氏にプログラム委員長をお願いしました。IBISが実力のある若い人がリーダーシップをとれるコミュニティであって欲しいというのが正直な願いでした。ポスタープレビューの提案やプログラム編成で色々工夫をしていただいた点や、オーラル・ポスターの選別でもプログラム委員会の先生方の意見を集約して、納得のいく決定をしていただきました。鈴木も自信をもって今日の開催の日を迎えることができました。この他、特別セッションが2テーマに増えたこと、ホームページに参加者名簿(IBIS2000で 東工大 樺島研究室で作成したものに改良を加えたもの)ができ、URLを通してお互いが事前に知り合えるようになったことなどもIBIS2000からの変化です。それと、人工知能学会人工知能基礎論研究会主催のベイジアンネットワークチュートリアル(BN2001)と連続開催の形をとり、本ワークショップが初めての方でも参加しやすくなっている点も今回初めての試みです。

さらなるIBISの感動を目指して、上記以外にも多くの方々のご努力ご尽力によって、今日のこのIBIS2001の開催を迎えることができたことを皆様にご報告し、開催責任者としての挨拶に代えさせていただきます。

IBIS2001プログラム委員長 福水健次

IBIS2001には、これまで以上に多数の講演申し込みをいただきました。まずその熱心な多くの参加者の皆様に対して、プログラム委員を代表して心からお礼を申し上げます。招待講演5件のほかに、50件以上の投稿論文をいただき、25件の口頭発表と26件のポスター発表からなる内容の濃いプログラムを編成することができました。本ワークショップは今年で第4回目を迎えます。過去3回は、いずれも幅広い分野の研究者が「学習理論」というキーワードのもとに集結し、真夏の伊豆・箱根でまさにアツい議論が繰り広げられました。私もその一員として参加し、広い分野の高いレベルの研究成果に触れる機会が得られたことをありがたく感じたものです。今回はプログラム委員長という任を受け、この特色がなるべく生かされるような形にしたい、さらには、学習理論研究に新しい流れを生み出せるようなワークショップにしていきたい、この二つを念頭にプログラムを考えていきました。その願いが少しでも実現されていれば幸いに思います。今回は昨年までに比べて様々な変更がありました。まず、昨年までの一泊二日の合宿形式をやめ三日間の開催と致しました。プログラムに余裕を持たせて議論を深め ていただくことを目指しています。また、分野の幅広さを考慮して口頭発表1件あたりの時間をなるべく多く取ることを心がけました。限られた件数の口頭発表の選定は非常に困難な作業であり、多くの優れた論文にポスター形式での発表をお願いする結果になっていることは、予稿集の論文を見ればお分かりいただけると思います。そのため、今回はポスター発表にも十分な時間を確保するとともに、発表の要点を短く示してもらうポスタープレビューの時間を用意しました。これらの変更点が、ワークショップをより有意義にしていることを願ってやみません。本年度の招待講演は、それぞれの分野で世界的に高い成果をあげていらっしゃる5名の先生にお願いすることができました。特別セッションには、データ・テキストマイニングと combining predictors という2つの話題を用意しました。前者は近年、応用面でのニーズが非常に高まっている話題であり、こういう現実的な問題から新しい理論的課題が認識され、かつその成果が応用にフィードバックされていくことが学習理論の発展には重要であろうと考えています。また第2の話題は、比較的新しい手法である boosting や bagging を中心としたアンサンブル的な予測手法について議論し、より本質的な発展の契機になることを目指しています。一般セッションの中にも、符号の問題に関して情報理論と統計物理という異なる観点からの議論がされるなど特色あるものが含まれていると思います。最後になりましたが、本ワークショップの内容は、査読を担当していただいた多くの方々の協力に支えられています。これら査読者の方々をはじめ、至らぬ点の多い委員長を支えてくださったプログラム委員の皆さんには最大限の感謝を表したいと思います。かつて日本の空を鴇色に染めていたというトキ(IBIS)のように、本ワークショップに集った皆さんの自由な発想が研究成果として大きく羽ばたいていくことを祈っています。